ていうか、図書館に一冊は置いといて欲しい。一般書店でも注文すれば手に入りますよ。 |
日本変形菌研究会では、「平凡社の図鑑」との愛称で呼ばれています。愛称があるくらいですから、愛用されているということです。漢字だらけの硬い題名とは違って、写真や図がたくさん使われていて、文章もわかりやすく書かれています。眺めているだけでもすごく楽しい一冊です。が、眺めているだけではもったいない!変形菌類の生態や分布、形態学の用語、採集方法などがここまで詳しく、日本語で書かれた本は他にありません。次にご紹介する「図説日本の変形菌」を活用するためにも必要な一冊です。ディープな愛好家からは、「紹介されている種類が少ない」とか、「同定に使う形態についての顕微鏡写真が載ってればいいのになあ」という要望が時々聞かれます。次にご紹介する「図説 日本の変形菌」があれば、克服される問題ですが...そこまで踏み入れたら、待っているのは、いばらの道かもしれませんぜ、ヒヒヒ。 |
愛称は「山本先生の図鑑」。変形菌類の図鑑では世界最高峰です(断定!)。日本でみられる変形菌類のほぼ全てが詳しく載っています。変形菌類は世界中に広く分布する種類が多いので、海外でも十分通用する図鑑です。各論のすばらしさもさることながら、付録的に載っている、変形菌類研究者列伝や文献リストは、筆者のこの分野への造詣の深さを表しています。とりわけ、研究者列伝は、何しろ、古今東西の「変人(変形菌な人)」大集合ですから、何をかいわんや、ですな。海外の研究者からは、「もうちょっと安くて、英語で書かれていれば良いのになあ」という呟きとも哀願ともお叱りとも取れるため息が聞こえてきています。日本の変形菌類愛好家は幸せ者です。 類似する種類との比較や最も重要な識別形質などについて、ノート的にもう少し触れてもらえればなあ、という愛用者からの声が聞こえておりますが、しかーし!最高峰であれば、征服が難しいのはあたりまえです。野外での観察・採集、顕微鏡観察を繰り返し、「日本変形菌図鑑」を併用して、ひたすら修行に励んでこそ、真の開眼を導けるというものです。 ちょっと大げさになっちゃいましたが、「平凡社の図鑑」と「山本先生の図鑑」があれば大丈夫、あるいは、なきゃあ始まんないよ、ということですな。 |
今でも国立科学博物館(上野)のミュージアムショップで買えます。600円。特別展のパンフレットとして作成されました。洗脳を目論んだ贈り物としては、最適な一品です。しかも、バイリンガル(日本語・英語)!感染力はインフルエンザ並みです。 |
たいへん有名なシリーズの中の一巻。シリーズでとっていて、これを見て変形菌類の存在を知った人もいるかもしれません。何しろ、大判で、しかも写真満載ですから、迫力があります。 |
変形菌類とその兄弟分の細胞性粘菌類(血は繋がっていないかも)について解説しています。培養を試みるのであれば、一読しなければ(「室内の変人」用ですね)。 |
外国語で書かれた図鑑です。今でも手に入ると思います。自力で調べるセミプロ向けですな。 |
日本変形菌研究会の古株が「まーちん・あれくそぽうろす」と呼んでいる図鑑です。英語で書かれています。当時の世界のほぼ全種類が載っています。かなり厚いです。5 cmはあります。隅々まで目を通すのはたいへんです。十数年前は、まだ、「山本先生の図鑑」が出版されていませんでしたから、本当によく使ったものです。今でもよく使います。Martin, Alexopoulos両氏の分類学的な取り扱いはLumper的(種類を少数にまとめる傾向があること)で、次に紹介するA Guide to Temperate Myxomycetesの著者Nannenga-Bremekamp氏と対比されます。よりシンプルにまとまっているため、本書に回帰しようとする動きもあるようです。しかし、現在までに出版された他の図鑑と比べてみると、簡単にまとまりすぎかな?と疑問に思います。この本に一度は回帰しても、本質的な問題解決にはならないと思うんですがねえ。 |
古株からは、「なんねんがーさんの本」と呼ばれています。「De Nederlandse Myxomyceten」(1974年、オランダ語)に加筆、英訳した図鑑です。「まーちん・あれくそぽうろす」とくらべ、Splitter(種類を細かく分ける傾向がある分類学者)的です。これも以前はたいへんよく使いました。山本幸憲氏もNannenga-Bremekamp氏の流れを汲む研究者ですから、「図説日本の変形菌」の分類体系の原型となっています。確かに、シンプルとはいい難いですが、著者の長年の経験と鋭い観察力がにじみ出ています。図がモノクロなのが残念です。 |
「どいつのずかん」と呼ばれています。Band 1から3の、3冊に分かれています。最も新しい図鑑で、内容も充実していて、写真や絵も豊富に用いられていて、文献情報も満載。レベル1に入れてもよさそうなくらい、「えくせれんと」ですが、ドイツ語で書かれているんですね。英語でさえ苦労してるのに、ドイツ語まで勉強せねばならんとは。ドイツ語の授業をサボるんじゃなかった...と、人生を振り返る一冊。出版社の名前を見ての通り、著者の一人が出版してるんですから、豪華な本になるはずです(Baumannさんは、ブラジャー会社で成功し、その後、趣味が高じて写真家になったとのことです。偉人です。)。ドイツ・オーストリアの変形菌類を対象にした図鑑ですが、日本との共通種が多いので、大いに参考になります。特に、好雪性の種類はあちらのほうが研究が進んでいますので、勉強になります。 |
この本は不思議と愛称では呼ばれませんね。日本変形菌研究会では、もっている人は結構いると思うんですが。たぶん、日本には「平凡社の図鑑」があるからです。Stephenson氏は変形菌類生態学の専門家です。生態学や分布についてはかなり詳しく書かれています。辞書を引き引き読むと、かなり面白い本なのですが、「平凡社の図鑑」のように写真も多くはありませんし、英語で書かれたものですから、敬遠されがちなんですね。ハードカバーの他、ペーパーバックもあります。 |
書評は書きません。だって、ここまで来ちゃったあなたなら、噂は聞こえているはずです。今でも手に入ると思います。 |
(ご家族の方へ:もう何をどう言っても無駄です。好きなだけ古本屋さんをさまよわせてあげてください。引き止めるより、相続する日を楽しみにしてください。) |
もちろん、まだまだいろいろあります。「増訂 那須産変形菌類図説」があるくらいですから、元の「那須産変形菌類図説」はありますし、MasseeやRostafinskiのモノグラフなんかは、変形菌類分類学黎明期の傑作です。図鑑以外でも、Biology of the Myxomycetesなんかは面白い本です。しかし、そこにまで手を出すのは、もはやプロフェッショナルです。ここで、「ああしろ、こうしろ」なんて言えません。 |