II.変形菌の生態的地位(ニッチ)
 変形菌の生態的地位はあまり論じられていないが、変形菌はおもに腐りつつある植物遺体に生息し、細菌類、酵母菌類、子嚢菌類、ときに担子菌類、まれに植物体の一部などを餌とする仲間である。 その中では細菌類と最も関係が深いと考えられている。 従って、細菌類などの分解者を消費する生物であり、生産者(炭酸同化生物、おもに植物)や消費者(非炭酸同化生物、おもに動物)を土に帰す役割の、いわゆるふつうの分解者とはかなり性質が違う仲間である。 言い換えると、変形菌には分解者の数を制御する役割があるので、調整者とでも言える仲間である。 更に別の言葉で言えば、植物の腐る速度を遅くする働きがあり、小動物にあるていど長期の住処を与える役割を持っていることになる。 インドのKalyanasundaram(2002)によれば、熱帯産の変形菌は大抵好気性細菌のEnterobacteriaceaeに属しているただ一種類の細菌と共同生活をすると言う。 その細菌は空中窒素の固定能力があり、変形体は細胞外に酵素を出して植物の材やリターなどを構成する高分子物質を劣化させ、有害な高濃度の重金属塩やアゾ色素に耐え、栄養物として炭化水素類が利用可能で、林床で栄養物のリサイクルや有害汚染物質の除去などに役立っていると言う。 温帯でのこのような研究は殆どされていないので、これからの研究課題になる。