IX.変形菌内の種間関係
変形菌をフィールドなどで観察すると、しばしば同じ発生基物に数種類が同時に
発生していることがある。これらの種はニッチの類似性を暗示していると思われる。
Stephenson (1988)は、米国における変形菌どうしの種間関係で、ニッチ(餌と生息場所)の
重複度が最大のものはヤリカミノケホコリとアオモジホコリで、コールの指数で最大値を示すのは
アカアミホコリとコホコリとの種間関係であるという。しかし、日本におけるデータを分析すれば
異なった結果が出ると思われる。Neubertら(1993, 1995, 2000)は採集標本中で見られる変形菌の
共存関係をていねいに記載している。しかし、共存関係の正確な解明にはかなり複雑な要素が考えられ、
これをどうまとめるかは今後の課題になると思う。