<変形菌の分類学的研究> 変形菌分類学の黄金時代は、ほぼ100年前にありました。現在は、世界的にみて第2期の黄金時代かもしれません。世界各国の研究者が集まる国際会議が開催され、いくつもの図鑑や入門書が出版されています。 |
(1)世界の研究史 変形菌は、150年前までキノコの仲間と考えられていました。キノコは、2千年以上も前のアリストテレスの時代から、動物と違って動かないために植物として扱われてきました。ところが、19世紀中頃に、ドイツの菌学者ド・バリーの注意深い観察によって変形菌は動物的であることがつきとめられました。それ以後、変形菌はキノコから独立した生物グループとして研究されています。 |
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(2)日本の研究史 欧米で高まった変形菌研究の波は、遠い日本にもすぐに伝わりました。当時の日本は、明治の中期にあり、先進国の文化を貪欲に吸収しようとしていたのです。日本人による日本産変形菌の第1報が発表されたのは1888年のことです。1908年には、最初の日本産変形菌目録がまとめられました。 貝原益軒の「大和本草」(1708)の中にある「鬼屎」が日本における最初の記録になるかもしれません。と言いますのは、鬼屎はススホコリの変形体と解釈されているからです。しかし、研究史上では、1854年にアメリカの北太平洋探検隊のチャレンジャー号が小笠原に寄港した時に植物学者のライトが変形菌を採集し、その変形菌を調べたイギリスの菌学者バークレイが1959年に新種Licea stipitata(=Tubifera stipitata エツキクダホコリ)として発表したことが、日本における最初の採集記録になります。 |
(3)現状と研究者達 現在は、変形菌の分類学研究の第2期黄金時代と将来呼ばれそうです。研究そのものは途絶えることなく続いてきていますが、それらの成果がまとめの段階に入るとともに、変形菌に興味を持つ人々が増え、その相互作用により図鑑類や入門書が次々出版されています。また、1993年には第1回国際会議がイギリスで開催され、1996年にスペインで行われた第2回会議には100名以上の研究者、学生などが集まりました。 リンク:(松本氏の国際会議原稿) |