変形菌分類学研究者の紹介(国外)
イタリアのフローレンス生まれ。家が貧しかったので、ほとんど教育を受けなかったという。しかしラテン語を、独学で習得し、植物に造詣が深かったので、イタリア中部の、トスカナ大公の、お抱えの植物学者に任命され、フローレンスの、植物園の管理もしたという。1729年に、『植物の新属、トールヌフォールの方法で配列され、1900の植物が扱われ、そのうち1400は、今まで観察されたことがなく、他の植物は自生地に言及され、菌、カビ、そして類似植物の、園芸、起源、栄養に関する、追加記事と観察を付す』という、古い文献によくある、長い表題の書物を、出版した。彼は顕微鏡を使用して、菌の胞子が発芽し、成長するのを、発見したと言われる。彼は、上に述べた本の中で、変形菌の正確な図を掲載した。また、ヤニホコリ属の一種の、「白い分岐したヤニホコリ属で、樹木の根と繊維(枝のこと?)に似ている」という記載は、変形体のことだと言われる。彼の学名は、リンネ以前で、命名規約上は、認められない。
ミケリの分類体系 (1729) Nova Genera Plantarum.
第1類.植物体は大抵皮殻質、内部は革質、粉質、にかわ質または酒石質で、裸の花弁のない花は種子と離生する。
Lichen, Lichen-agaricus, Lichenoides
第2類.植物体は分岐せず、大抵肉質で、通常とは異なるか不規則。花は花弁がなく、明らかに1本の糸状の1雄蕋をもち種子とは離生する。
Agaricum, Ceratospermum, Linckia
第3類.植物体は分岐せず、肉質、規則的で、1雄蕋の無花弁の花があるか、1糸状体をもち、種子とは離生する。
Suillus, Polyporus, Erinaceus, Fungus, Fungoidaster, Phallus, Phallo-boletus, Boletus
第4類.植物体は分岐せず、大抵頭状ではない。種子は表面に生じる。
Fungoids, Clavaria, Coralloides, Byssus, Botrytis, Aspergillus, Puccinia(ツノホコリを含む)
第5類.植物体は分岐せず、種子は内部に生じる。
Clathrus, Clathroides(ウツボホコリ), Clathroidastrum(ムラサキホコリ),Lycogala(マメホコリ), Mucilago(ヤニホコリ), Lycoperdon, Lycoperdoides, Lycoperdastrum, Geaster, Carpobolus, Tuber, Cyathoides
スイスに生まれ、チュービンゲン、ライデン両大学で医学を修め、のちにゲッチンゲン大学の、植物学などの教授になった。アルプスにたびたび登山し、その美しさを、初めて世の中に紹介した人と言われる。また彼は、イギリスのジョージ二世の、長男の内科医に任命されていたという。1742年には、『スイスに自生する植物の、分類学的、記載学的目録』を著した。この本の中で、彼は現在の、ハチノスケホコリの、正確な図と記載を、書いていると言う。また1868年に出版された『スイス自生植物の歴史初歩』第3巻では、ケホコリ属を設けた。
スウェーデンの貴族で、1751年に『一般自然史、または世界各地の動植物、鉱物の、新しく正確な記載・・・』の中で、ウツボホコリ属を記載した。しかし、その記載は、面白く、奇怪である。「ウツボホコリ属は、菌の一属で、頭部は網状で、顕著な、雄と雌の花を含む容器、またはつぼから生じ、中空ではない。雄花は長楕円形の葯のみで、網目の隆起部に付着した糸の頂端に、4個ずつ並んでいる。雌花は種子のみがあり、小さくて卵形をしている」。彼の種の記載などは、リンネの二名法の、先駆けをなすと言われる。
スウェーデン生まれ。幼時より、植物に興味を持ち、8歳の時、「小さな植物学者」と、あだ名されたと言う。父は、彼を牧師にしようとしたが、修行を怠るので、一時、靴屋の、徒弟に出されたと言う。大学では医学を学んだ。貧しかったので、婚約者の経済的援助で、学位を得た。1735年、『自然の体系』を出版した。のちに、この本の第10版が、現在の動物命名の出発点となる。1738年からは、ストックホルムで医者を開業したが、1741年、ウプサラ大学の解剖学教授に招かれ、翌年、植物学担当となる。1753年5月1日には、有名な『植物の種』の初版を出す。この日付が、現在の、国際植物命名規約上の、変形菌類の分類学上の出発点でもある。彼は1765年には貴族に列せられ、vonの称号を持つようになった。1774年、講義中に脳溢血の発作に見舞われ、4年後にウプサラで死亡した。彼の標本と蔵書は、未亡人が、ロンドンのリンネ学会の初代会長となった、スミス(J. E. Smith)に売却したので、現在はイギリスに保存されている。この標本を取り返そうと、運搬している船を、スウェーデンの軍艦が、追跡したという伝説がある。彼の最大の業績は、生物の名を、属名と種小名で表す、二名法の創始である。もちろん変形菌も、この恩恵を受けている。しかし、『植物の種』の初版では、変形菌は、ウツボホコリと、マメホコリの、2種が記載されているのみである。1763年に出た、同書の第二版でも、菌類は、わずか17頁、10属が、扱われたに過ぎず、ミケリの扱った菌の種数の、十分の一以下である。変形菌はそのうち3属(Lycoperdon, Clathrus, Mucor)に、7種が取り上げられているに過ぎない。そのうち、学名が、現在も使われているものは4種(ウツボホコリ、マメホコリ、ススホコリ、ツチグリホネホコリ)しかない。明らかに、ミケリの分類から、後退している。
オーストリアのチロルの植物・鉱物学者。1772年に、ヘビヌカホコリの記載をした。
ドイツのイェーナに生まれ、のちにイェーナ大学の教授となったが、若くして41歳で死亡している。彼はわずか22歳で、イェーナ付近の菌をまとめた、『菌の索引・・・・・』を著した。この書で、8種の変形菌を図説しているが、ハチノスケホコリとクモノスホコリの図は、特に優れていると言われる。
フランスのオーブピエールで生まれ、晩年の1791年に『フランスのきのこの歴史』を著わした。この本の、変形菌の図は、非常に優れているので、すぐに同定できると言われる。彼の名はシロウツボホコリや、マンジュウドロホコリの学名に残っている。
ペルソーンの、誕生年月日と、死亡日時は、正確には判っていない。彼の父は、オランダの、東インド会社で働いていて、ポメラニアから、当時、植民地だった、ケープ・タウンに移住した。そこで、オランダの農夫の娘(G・リスターらに信じられていたように、ホッテントットではない)と、結婚した。まもなく、両親が死亡したので、ペルソーンらは、孤児院に預けられた。1775年に、ペルソーンは欧州に送られ、のち、オランダとドイツで学び、エアランゲンで学位をとった。その後4年間は、旅行をして過ごし、1803年から、パリに落ち着き、貧しい通りの、7階にある部屋で、世捨て人のように暮らした。彼は明らかに、変人で、「菌の研究は、室内で、一人でできるので好きだ」と告白したと言う。彼は公的な地位にはつかなかったので、一生貧しく、晩年には、完全に窮乏していたと言われる。彼の伝記を書いた、イタリアのフェーは、次のように書いている。「フランス人は、一つの例外を除いて、彼の欠点を大目にみたので、ペルソーンは高い地位を保った。一つの例外は、彼の容貌が、野暮で、グロテスクであったことだ」。
1801年に彼が書いた『菌学方法概要』は、サビ菌類、クロボ菌類、腹菌類の、国際命名規約上の、出発点となっている。彼の、種の類縁関係に対する直感力はすばらしく、記載した11属の、変形菌の学名は、現在でも、ほとんど通用する。
ペルソーンの分類体系 (1801) Synopsis Methodica Fungorum.
第1綱 Angiocarpi
第1目Sclerocarpi (Xyloma etc.)
第2目Sarcocarpi (Tuber etc.)
第3目Dermatocarpi
第1亜目 Trichospermi有細毛体類 (Batarkea, Tulostoma, Geastrum, Bovista, Lycoperdon, Scleroderma, Lycogalaマメホコリ, Fuligoススホコリ, Spumariaホネモジホコリ, Didermaホネホコリ, Physarumモジホコリ, Trichiaケホコリ, Arcyriaウツボホコリ, Stemonitisムラサキホコリ, Cribrariaアミホコリ<Dicydia, Cribrariae>)
第2亜目 Gymnospermi無細毛体類 (Liceaコホコリ, Tubulinaクダホコリ, Mucor, Onygena, Aecidium, Uredo, Puccinia, Trichoderma, Conoplea)
第3亜目Sarcospermi (Cyathus)
第2綱 Gymnocapi
第4目Litothecii (Phallus etc.)
第5目Hymenothecii (Agaricus etc.)
第6目Nematothecii (Botrytis etc. Mesenterica)
ドイツのヒルデシャイム生まれ。のちにゲッチンゲン大学の教授となった。ペルソーンの指導をうけて、1797年に、『植物の新属』を著わした。この本で扱われた、新しい属は、すべて変形菌で、アミホコリ、クモノスホコリ、コホコリ、カタホコリ各属の27種を記載している。これらの種の概念は、現在のものと、ほとんど変わらないと、言われる。
ドイツのヒルデシャイム生まれ。ロストック、ブレスラウ、ベルリン大学の、植物学教授となり、王立標本庫と、植物園の管理者もつとめた。1833年、『有益で、非常に頻繁に発生する、生物を知るための、案内書』で、変形菌の特異性を認識し、「Myxomycetes」という語を使用した。一般には、同年、同国の、ヴァルロート (K. F. W. Wallroth, 1792〜1857) が、『ドイツ隠花植物誌』で、この言葉を使用したのが最初とされているが、腹菌類のシノニム(同物異名)とみなして、混乱して使っていると言われる。
米国最初の菌学者と言われる。ペンシルバニア生まれで、1798年以後、サクソニーのアルベルチニのもとで学び、彼と共著で1805年に、『ラウジッツの菌類研究』を発表した。1812年米国に帰国し、教会勤めをしながら菌類の研究を続けた。1832年には、『北米産菌類概要』を著わし、当時アメリカで知られていた、約4000種の菌類を記載した。
スウェーデン生まれ。田舎の牧師の息子で、のちルンド大学で学び、ウプサラ大学の植物学教授となった。彼は12歳までには、付近のおもな植物が、判別できたと言われる。12歳の時には、母親と一緒に、イチゴ摘みに行って、大きなきのこを見つけた。このことが、彼の、菌に対する興味を沸かせ、17歳までには、名前は判らなくても、300〜400の菌を、識別できたと言われる。彼の『菌の体系』(1829年)と、その補遺の中では、約5000種の菌が記載されている。この『菌の体系』が、現在の、サビ菌、クロボ菌、腹菌、変形菌以外の菌類の、国際命名規約上の出発点となっている。また、この成書の第3巻(1829)の腹菌目の中に、変形菌が、変形体期を経ることを観察して、モジホコリ亜目(Myxogasteres)を設けた。
フリースの分類体系 (1829) Systema Mycologicum.
Classis 2. Gasteromycetes
Ordo 3. Trichospermi
Subordo 1. Trichogastres
Subordo 2. Myxogastresモジホコリ亜目
Aethalini ススホコリ類 (Lycogala, Reticularia, Aethalium, Spumaria)
Physarei モジホコリ類 (Diderma <Trib. Leangium, Trib. Botryosa,Trib. Sessilia>, Didymium <Trib. Stipitata, Trib. Botryosa, Trib. Sessilia, Trib. Adnata>, Physarum <Trib. Stipitata, Trib. Botryoidea, Trib. Sessilia, Trib. Adnata>, Craterium)
Stemonitei ムラサキホコリ類 (Diachea, Stemonitis <Fasciculatae, Simplices, Physaroideae>, Dictydium, Cribraria)
Trichiacei ケホコリ類 (Arcyria <Trib. Lachnobolus, Trib. Arcyriae>, Trichia <Trib. Hemiarcyriae, Trib. Goniospora>, Perichaena, Licea, <Trib. Tubulina, Trib. Serpularia, Trib. Phelonitis>, Cirrholus)
Classis Hyphomycetes
Ordo 1. Cephalotrichei
Gen. 8. Ceratium(ツノホコリ属)
英国生まれ。牧師であったが、1836年、『スミスの英国植物誌』の、菌類の項を執筆した。分類体系はフリースに従っていて、63種の、英国産変形菌が扱われている。彼はこれ以後、ずっと菌の研究を続けた。彼は子供が多かったので、収入を得るため、一時は、子供のための学校を開き、菌の研究は、朝早く起きてしたという。世界各地から標本が送られて来たが、この標本の研究は、友人のブルーメ(Christopher Broome)と、共同研究したものが多い。彼の菌に関する論文は約400、記載した新種は約6000と言われる。標本は、キューのバークレー標本庫と、大英博物館のブルーメ標本庫に収められている。彼は顕微鏡をほとんど使わず、ルーペで観察している。彼の創設した変形菌の新属、フウセンホコリ属の胞子塊は、透明な袋に包まれ、袋は破れるか、または吸収されるという、奇妙な考えを持っていた。
米国生まれ。教会の牧師であったが、1835年からノースカロライナ州に住んで、英国のバークレイと共同で、アメリカの菌類を研究した。彼の標本は、ケンブリッジの、ファーロウ標本庫に収められている。英国のバークレイとともに、日本産変形菌を、初めて記録した人でもある。
イギリスで、商人の子として生まれた。子供の頃、天然痘にかかり、一時的に盲目となり、12歳の時まで、眼が不自由だった。また、生涯を通じて、消化不良だったという。長じて、菌類に興味を抱き、1871年、『英国産菌類ハンドブック』を著した。1872年には、隠花植物学の雑誌、『Grevillea』を創刊し、編集にあたった。1877年には、ロスタフィンスキーのモノグラフに基づいて、『英国産変形菌』を著した。1880年から1892年まで、キューの王立植物園に勤めた。彼の収集した標本は46000点、図は25000点、そのうち、自身で描いたものが6000点に及び、キュー標本庫に収められているという。
米国ニューヨーク州で、14人家族の10番目の子供として生まれた。16歳までは、父の農業を手伝った。大学卒業後は、各地の教師を勤めた。偶然、ラヴネル (Henry William Ravenel, 1814〜1887) の、菌の標本集を見たことがきっかけとなり、1855年、彼に手紙を送り、二人の文通は1887年の、ラヴネルの死の年まで続いた。南北戦争中の1864年には、北軍の、蒸気フリゲート艦に乗船した。1865年、除隊してからは、自分の桃園の仕事をしたり、教師をつとめたりした。1875年から1879年まで、英国のクックに、たくさんの菌の標本を送り、一部は『グレヴィレア』に発表された。1880年から、フィラデルフィアの裕福な商人、エヴァーハート (Benjamin Matlack Everhart, 1818〜1904) と、共同研究を開始した。1885年には、『Journal of Mycology』を、彼らと一緒に創刊した。1900年には、ニューヨーク植物園に、彼の標本が購入されたが、総数は8万点に達したといわれている。彼はラテン、ギリシア、ドイツ、フランス、ポーランド、スェーデン、イタリア、スペイン語に詳しかったという。
ドイツのフランクフルトで、開業医の息子として生まれた。医者の資格をとって、故郷で短期間開業した。のち、チュービンゲン大学の植物学の講師となり、その後、フライブルク、ハレ、シュトラスブルク各大学の教授を勤め、最後は総長となったが、57歳の時、癌で死亡した。近代菌学の祖とも言われる。1859年、『粘菌』、1864年、同第2版、1866年には『菌、地衣、粘菌の形態学と生理学』を著した。これらの本が、粘菌を明らかに真菌類と区別した、最初の本であるとされている。彼は胞子培養を行い、遊走子が形成され、分裂も行い、鞭毛を引っ込めて、粘菌アメーバに変化し、のちに変形体を形成することなどを、初めて観察した。また変形体の構造、型、往復原形質流動なども記載し、最近の変形菌分類学の先駆者でもある。そのほか、子実体、細毛体、胞子の形成など、発生学的なことも観察している。
米国ニューヨーク州で、英国系移民の子として生まれた。少年時代に通った学校は、冬の間だけしか開かれなかったと言う。州立学校時代に、ある婦人に、植物採集に、森へ連れて行ってもらったことがきっかけとなり、植物に興味をもち始めた。大学卒業後、学校の教師をしながら、コケなどの研究を行なった。1867年には、アルバニーの州立自然史館(後のニューヨーク州立博物館)の、植物学担当者に任命された。彼が菌の研究を始めたのは、カーチスに影響を受けたからだと言われる。1868年から1913年まで、年報を出し、2700以上の、菌の新分類群を提案した。
ロシアのペテルブルグ大学の植物学教授で、粘菌アメーバの接合や、変形体の食作用の、初めての観察者と言われる。変形体に、「plasmodium」という名を付けた人でもある。彼の名はツナホコリなどに残っている。
二人は、共に、ロシアのペテルブルグ大学の、ツェンコフスキーのもとで学んだ。卒業する際、前者は金メダル、後者は銀メダルをもらったと言われる。二人ともドイツに留学し、のちに、前者は、ペテルブルグ大学の、植物生理学教授となり、後者は、おもに、アマチュアとして、家に研究室を設けて、研究を続けた。後者はマンモスの胃の内容物を調べる仕事をしているときに亡くなったという。二人は仲の良い友達で、1873年に、ツノホコリの生活史を、初めて詳しく記録した。
米国オハイオ州生まれ。デイトンで高校の数学教師を勤めたのち、陸軍に入隊した。軍務中に、腸チフスにかかり、除隊。その後、教科書会社のために、各地を7年間旅行したが、体の部分まひとなり、勤めを辞めた。1870年に、結婚して妻の故郷へ行き、菌類の研究を始めた。採集品はペックに同定してもらい、ずっと親交を続けた。この間の、マイアミ渓谷の変形菌の研究は、有名である。彼は学会などには出席しなかったので、あまりよく知られていなかったという。後にデイトンの学校の校長を勤めたりしたのち、オハイオ州プレストンの家で、肺炎のため死亡した。
ポーランドのワルシャワで生まれ、ドイツのイェナ大学のシュトラスブルガー、ハレ大学のド・バリのもとで学び、のちにクラコウ大学の教授となった。彼の『粘菌モノグラフ』(1874)と、その補遺(1875)は、近代変形菌分類学の基礎となった。
ロスタフィンスキーの分類体系 (1875) Sluzowce (Mycetozoa) Monografia.
Mycetozoa
Div. Exosporeae 外生胞子類 (Ceratiumツノホコリ属)
Div. Endosporeae 内生胞子類
Subdiv. Amaurosporeae 暗色胞子類
Sect. Atrichae 無細毛体類
Ord. Protodermeae コガタコホコリ目
Fam. Protodermaceae コガタコホコリ科 (Protodermaコガタコホコリ属)
Sect. Trichophorae 有細毛体類
Ord. Calcareae モジホコリ目
Fam. Cienkowskiaceae ツナホコリ科 (Cienkowskiaツナホコリ属)
Fam. Physaraceae モジホコリ科 (Physarum, Craterium <Leiocraterium, Trachycraterium>, Crateriacheaカワリモジホコリ属, Tilmadocheシロモジホコリ属, Leocarpus, Fuligo, Trichamphoraサラモジホコリ属<のち削除>, Badhamia, Scyphiumタマサカズキホコリ属 <のち削除>)
Fam. Didymiaceae カタホコリ科 (Didymium <Serpularia, Cionium, Acioniscium>, Chondriodermaホネホコリ属<Monoderma, Diderma, Leangium>, Lepidoderma)
Fam. Spumariaceae ヤニホコリ科 (Diachea, Spumariaヤニホコリ属)
Ord. Amaurochaeteae スミホコリ目
Fam. Stemonitaceae ムラサキホコリ科 (Stemonitis, Comatricha,Lamproderma)
Fam. Enerthenemaceae フサホコリ科 (Enerthenema)
Fam. Amaurochaetaceae スミホコリ科 (Amaurochaete)
Fam. Brefeldiaceae ブレフェルトホコリ科 (Brefeldia)
Fam. Echinosteliaceae ハリホコリ科 (Echinosteium)
Subdiv. Lamprosporae 有色胞子類
Sect. Atrichae 無細毛体類
Ord. Anemeae コホコリ目
Fam. Dictyosteliaceae 細胞性粘菌類 (Dictyostelium)
Fam. Liceaeceae コホコリ科 (Licea, Tubulinaクダホコリ属, Lindbladia)
Fam. Clathroptychiaceae ハシラホコリ科 (Clathroptychiumハシラホコリ属, Enteridium)
Ord. Heterodermeaeアミホコリ目
Fam. Cribrariaceae アミホコリ科 (Dictydium, Heterodictyonアミクモノスホコリ属, Cribraria )
Sect. Trichophorae 有細毛体類
Ord. Reticularieae <のちColumelliferae> ドロホコリ目
Fam. Reticulariaceae ドロホコリ科 (Siphoptychiumオオクダホコリ属<のち追加>, Reticulariaドロホコリ属)
Ord. Calonemeae ケホコリ目
Fam. Trichiacae ケホコリ科 (Prototrichiaのち追加, Trichia,Hemiarcyriaヌカホコリ属)
Fam. Arcyriaceae ウツボホコリ科 (Arcyria <Clathroides, Arcyrella>, Lachnobolusカサネホコリ属, Dermodiumイクビマメホコリ属, Lycogala, Cornuvia, Oligonema)
Fam. Perichaenaceae ヒモホコリ科 (Perichaena)
米国フィラデルフィア生まれ。ペンシルベニア大学で医学を学び、解剖学の実演助手を経て、医者となった。南北戦争の時は、海軍の技師として、軍務についた。医者としての仕事の傍らに、趣味として、変形菌の研究を行い、多くの新種を発見した。モーガンは、彼を高く評価していたという。レックスはグリエルマ・リスターと親しく文通したので、彼の名は、リスターの『粘菌モノグラフ』の中に、しばしば出てくる。50歳のとき、心臓病で突然死亡した。
シュレーターの分類体系 (1885-1886) Myxogasteres Fr. 1829. In F. Cohn, Kryptogamen-Flora von Schlesien 10 (3) Pt. 1. 98-133pp.
Ord. Myxogasteres 変形菌目
Subord. Exosporei 外生胞子亜目
Fam. Ceratiacei ツノホコリ科 (Ceratium)
Subord. Endosporei 内生胞子亜目
Anemei(石灰も細毛体もない)
Fam. Liceacei コホコリ科 (Licea, Tubulina, Lindbladia, Protoderma)
Fam. Clathroptychiacei ハシラホコリ科 (Enteridium, Clathroptychium)
Fam. Cribrariacei アミホコリ科 (Cribraria, Dictydium)
Calonemeae(石灰はない。細毛体は管状で、ふつう模様がある)
Fam. Trichiacei ケホコリ科
Subfam. Perichaenei ヒモホコリ亜科 (Perichaena)
Subfam. Arcyriei ウツボホコリ亜科 (Oligonema, Cornuvia, Arcyria,Lachnobolus, Lycogala)
Subfam. Trichiei ケホコリ亜科 (Trichia, Hemiarcyria)
Platynemei (石灰はない。細毛体は膜質の板、またはひも状)
Fam. Reticulariacei ドロホコリ科 (Amaurochaete, Reticularia)
Leptonemei (石灰はない。細毛体は管状。胞子はすみれ色をおびる)
Fam. Stemonitacei ムラサキホコリ科
Subfam. Stemonitei ムラサキホコリ亜科 (Stemonitis, Comatricha,Lamproderma)
Subfam. Brefeldiei ブレフェルトホコリ亜科 (Brefeldia)
Fam. Physaracei モジホコリ科
Subfam. Spumariei ヤニホコリ亜科 (Diachea, Spumaria)
Subfam. Didymiei カタホコリ亜科 (Didymium, Lepidoderma,Chondrioderma)
Subfam. Physarei モジホコリ亜科 (Tilmadoche, Leocarpus, Craterium,Physarum, Cienkowskia, Badhamia, Fuligo)
デンマーク生まれ。植物の生活形の分類で有名だが、20〜30歳頃には、デンマークの変形菌、1905ー1906年頃には、西インド諸島で、変形菌を調査した。1928年には、変形菌指数を提唱した。
ラウンケルの分類体系 (1890) Myxomycetes Daniae (Bot. Tidsk. 17: 20-110).
A. 細毛体はない
Subord. Homodermeae同質子嚢壁亜目
Fam. Liceaceaeコホコリ科 (Tubulina, Lindbladia)
Subord. Heterodermeae異質子嚢壁亜目
Fam. Clathroptychaceaeハシラホコリ科 (Enteridium, Clathroptychium)
Fam. Cribrariaceaeアミホコリ科 (Cribraria, Dictydium)
B. 細毛体がある
Subord. Coelonemeae管状細毛体亜目
Fam. Arcyriaceaeウツボホコリ科 (Perichaena, Lachnobolus, Arcyria,Cornuvia, Lycogala)
Fam. Trichiaceaeケホコリ科 (Hemiarcyria, Trichia)
Subord. Stereonemeae立体細毛体亜目
Fam. Physaraceaeモジホコリ科 (Badhamia, Physarum, Tilmadoche, Fuligo, Leocarpus, Craterium)
Fam. Didymiaceaeカタホコリ科 (Chondrioderma, Lepidoderma, Didymium, Spumaria)
Fam. Stemonitaceaeムラサキホコリ科 (Lamproderma, Enerthenema, Ancyrophorus, Comatricha, Stemonitis, Brefeldia, Reticularia)
イギリスの、農家の一人息子として生まれた。のち、ランの採集などのため、西インド諸島と、南米に、旅行する機会を与えられた。旅行の途中、彼は赤痢にかかり、意識がなくなって、インディアンの小屋で看護を受けた。木の枝から、飛びかかってきたピューマから、間一髪で逃れたこともあったという。帰国後、普仏戦争に、フランスの外人部隊として参加した。彼はその折、左腕に部隊名を入れ墨した。戦争に参加したことを知った母親は、驚いて彼を呼び戻し、農業に従事させた。父親の死後、いろいろな学校で植物学を教えた。1892年には、『変形菌モノグラフ』を著した。翌1893年から1915年まで、クックの退職後の、キュー標本庫の、下等隠花植物を担当した。その間、1896年には、イギリス菌学会の初代会長に選出された。彼は一生の間に、250編以上の論文を発表したという。1917年、インフルエンザで死亡した。
マッシーの分類体系 (1892) A Monograph of the Myxogastres.
Myxogastres
Ord. Peritricheae クダホコリ目(石灰はない。細毛体はないか、子嚢壁から出る)
Subord. Tubulinae クダホコリ亜目 (Tubulina, Protodermium)
Subord. Cribrariae アミホコリ亜目 (Orcadella, Enteridium,Clathroptychium, Cribraria, Dictydium)
Ord. Columelliferae ムラサキホコリ目(石灰はない。細毛体は中央の軸柱から生じる)
Subord. Stemonitae ムラサキホコリ亜目 (Stemonitis, Siphoptychium, Amaurochaete, Brefeldia, Rostafinskia)
Subord. Lamprodermae ルリホコリ亜目 (Enerthenema, Ancyrophorus, Lamproderma, Echinostelium, Raciborskia, Orthotricha)
Ord. Lithodermeae モジホコリ目(石灰と細毛体がある)
Subord. Didymeae カタホコリ亜目 (Chondrioderma, Didymium, Lepidoderma, Spumaria, Diachaea)
Subord. Physarae モジホコリ亜目 (Badhamia, Craterium, Physarum, Tilmadoche, Leocarpus, Cienkowskia, Crateriachea, Fuligo)
Ord. Calotricheae ケホコリ目(石灰はない。細毛体はあり、軸柱はない)
Subord. Tricheae ケホコリ亜目 (Trichia, Oligonema)
Subord. Arcyriae ウツボホコリ亜目 (Prototrichia, Perichaena, Ophiotheca
トゲヒモホコリ属, Heterotrichia, Lachnobolus, Arcyria, Lycogala)
米国テネシー州生まれ。父親は牧師で、奴隷廃止論者であったので、よそへ引っ越さなければならなくなり、南北戦争の数年前に、アイオワ州に移った。1870年から1878年まで、大学の数学と語学の教授を勤めた。1878年に、自然史の教授をしていた友人に呼ばれて、アイオワ州立大学の助教授となり、そこで56年間、植物学の教授、学長、名誉学長などを勤めた。彼は1892年に、初めて、「アイオワ東部の変形菌」と題する、変形菌の論文を出した。1899年には『北米産変形菌』、1922年同書の第2版、1934年、彼の死後、マーチンと共著の、『変形菌』が出た。
マクブライドの分類体系 (1922) The North American Slime-moulds. ed. 2.
Myxomycetes変形菌綱
Phytomxinae根粒病菌亜綱 (Plasmodiophora)
Exosporeae外生胞子亜綱 (Ceratiomyxa)
Myxogastres内生胞子亜綱
Series A
Order Physaralesモジホコリ目
Physaraceaeモジホコリ科 (Fuligo, Badhamia, Physarum, Craterium, Physarella, Cienkowskia, Leocarpus, Trichamphora, Erionema)
Didymiaceaeカタホコリ科 (Mucilago, Didymium, Diderma [Subg. Diderma, Leangium], Lepidoderma, Colloderma)
Stemonitalesムラサキホコリ目
Amaurochaetaceaeスミホコリ科 (Amaurochaete)
Stemonitaceaeムラサキホコリ科 (Brefeldia, Stemonitis, Comatricha, Diachaea)
Lamprodermaceaeルリホコリ科 (Enerthenema, Clastoderma, Lamproderma, Echinostelium)
Series B
Cribrarialesアミホコリ目
Liceaceaeコホコリ科 (Licea)
Orcadellaceaeミズサシコホコリ科 (Orcadella)
Tubiferaceaeクダホコリ科 (Lindbladia, Tubifera, Alwisia)
Reticulariaceaeドロホコリ科 (Reticularia, Enteridium, Dictydiaethalium)
Cribrariaceaeアミホコリ科 (Cribraria, Dictydium)
Lycogalallesマメホコリ目
Lycogalaceaeマメホコリ科 (Lycogala)
Trichialesケホコリ目
Dianemaceaeイトホコリ科 (Margarita, Dianema)
Perichaenaceaeヒモホコリ科 (Ophiotheca, Perichaena)
Arcyriaceaeウツボホコリ科 (Lachnobolus, Arcyria, Heterotrichia)
Prototrichiaceaeフデゲホコリ科 (Prototrichia)
Trichiaceaeケホコリ科 (Hemitrichia, Calonema, Trichia, Oligonema)
イギリス生まれ。彼は少年時代から、ずっと鳥が好きであった。16歳の時、化学会社に奉公に出た。その後、羊毛商人の共同経営者となった。1857年には、酒類を扱う、父の会社を継いだ。1876年から1877年にかけての冬に、森で、木の株に生じたキウロコタケの上に広がった、ブドウフウセンホコリの変形体を見つけた。それを持ち帰り、菌核を形成させ、キウロコタケを餌にして、数年間培養することができた。1877年、リンネ協会の席で、この変形体を展示した。この時以来、彼の興味は、変形菌に集中して行った。その後、バルフォア教授がド・バリのもとで研究していたときの、標本の同定を依頼してきた。またグレヴィルの標本の研究も頼まれた。1892年には大英博物館から、博物館の変形菌目録を作成する依頼を受けた。彼と娘はキューに居をかまえて、この仕事に全精力を傾けた。この間にシュトラスブルクにある、ド・バリの標本も調査した。目録は1894年、『粘菌モノグラフ』として出版された。1898年には王立協会会員、1906年、英国菌学会会長となった。彼の死後、研究は、娘のグリエルマによって引き継がれた。
アーサー・リスターの娘で、16歳の時に、一年間、女子大学に通った他は、家庭で教育を受け、一生独身で過ごした。父のアーサーは、『粘菌モノグラフ』初版の序文で、次のように書いている。「私の粘菌の研究、そして図版の準備期間中、ずっと娘グリエルマ・リスターの援助を受けた」。1903年には菌学会に入会し、1904年には、女性にも門戸が開かれた、リンネ協会の会員に選ばれた。父の死後、1911年に、『粘菌モノグラフ』第2版を著した。1912年、英国菌学会会長。1916年から1919年まで、エセックス・フィールド・クラブの会長職にあった。1924年からは、英国菌学会名誉会員に選ばれている。1925年、『粘菌モノグラフ』第3版を出し、変形菌分類学の、世界的権威となった。1929年から1931年まで、リンネ協会副会長を勤めた。1932年には、再び英国菌学会会長となった。彼女の図を見てもわかるように、芸術的歳能は素晴らしかった。また、ロスタフィンスキーの本を読むために、ポーランド語の勉強もしたという。毎日の通信や、研究は、詳細に記録して、ノートに残したが、現在、このノートは、ロンドンの自然史博物館に保存されている。
リスターの分類体系 (1925) A Monograph of the Mycetozoa ed. 3.
Mycetozoa
Exosporeae外生胞子綱
Ceratiomyxaceaeツノホコリ科 (Ceratiomyxa)
Endosporeae内生胞子綱
Amaurosporales暗色胞子目
Calcarineae石灰質亜目
Physaraceaeモジホコリ科 (Badhamia, Physarum, Fuligo, Erionema, Trichamphora, Physarella, Cienkowskia, Craterium, Leocarpus, Diderma [Eudiderma, Leangium], Physarina, Diachea)
Didymiaceaeカタホコリ科 (Didymium [Eudidimium, Lepidodermopsis], Mucilago, Lepidoderma, Leptoderma)
Amaurochaetineae非石灰質亜目
Collodermaceaeメダマホコリ科 (Colloderma)
Stemonitaceaeムラサキホコリ科 (Stemonitis, Comatricha, Enerthenema, Lamproderma, Clastoderma, Echinostelium, Barbeyella)
Amaurochaetaceaeスミホコリ科 (Amaurochaete, Brefeldia)
Lamprosporales有色胞子目
Anemineae無細毛体亜目
Heterodermaceaeアミホコリ科 (Lindbladia, Cribraria, Dictydium)
Liceaeceaeコホコリ科 (Licea, Hymenobolina, Orcadella)
Tubulinaceaeクダホコリ科 (Tubifera, Alwisia)
Reticulariaceaeドロホコリ科 (Dictydiaethalium, Enteidium, Reticularia,Liceopsis)
Lycogalaceaeマメホコリ科 (Lycogala)
Calonemineae細毛体亜目
Trichiaceaeケホコリ科 (Trichia, Oligonema, Calonema, Hemitrichia, Cornuvia)
Arcyriaceaeウツボホコリ科 (Arcyria, Lachnobolus, Perichaena, Minakatella)
Margaritaceaeコガネホコリ科 (Margarita, Dianema, Prototrichia, Listerella)
ドイツ生まれで、1928年、有名なエングラーとプラントルの、『自然の植物の科』の中に、『変形菌』をまとめた。大学の教科書としてもよく使われたものである。
ヤーンの分類体系 (1928) Myxomycetes. In Engler & Prantle, Die natuerl. Pflanzenfamilien. Aufl. 2. Bd. 2.
Myxomycetes
Hydromyxales水生変形菌目
Plakopodaceae (Plakopus, Vampyrellidium)
Vampyrellaceae (Vampyrella, Biomyxa)
Exosporales外生胞子目
Ceratiomyxaceae (Ceratiomyxa)
Enteridialesドロホコリ目
Reticulariaceae (Enteidium, Reticularia, Liceopsis, Dictydiaethalium)
Tubiferaceae (Tubifera, Alwisia)
Lycogalaceae (Lycogala)
Licealesコホコリ目
Liceaeceae (Licea, Kleistobolus, Hymenobolina, Orcadella)
Listerellaceae (Listerella)
Cribrarialesアミホコリ目
Cribrariaceae (Lindbladia, Cribraria, Dictydium)
Stemonitalesムラサキホコリ目
Amaurochaetaceae (Amaurochaete)
Stemonitaceae (Brefeldia, Stemonitis, Comatricha, Enerthenema, Lamproderma)
Collodermaceae (Colloderma)
Echinosteliaceae (Echinostelium, Clastoderma, Barbeyella)
Physaralesモジホコリ目
Physaraceae (Diachea, Badhamia, Physarum, Fuligo, Erionema, Cienkowskia, Trichamphora, Physarella, Craterium, Leocarpus, Diderma, Physarina)
Didymiaceae (Leptoderma, Didymium, Spumaria, Lepidoderma)
Margaritalesコガネホコリ目
Margaritaceae (Dianema, Margarita, Prototrichia)
Trichialesケホコリ目
Arcyriaceae (Minakatella, Lachnobolus, Perichaena, Arcyria)
Trichiaceae (Oligonema, Cornuvia, Hemitrichia, Trichia)
米国マサチューセッツ州生まれ。ハーバード大学で学び、学位を得た。最初、同大学の隠花植物学研究所の助手となり、のち、コネチカット農業実験所、コロラド大学などで勤務した。1917年、ニューヨークに移り、いろいろの宗教活動をした。彼はコネチカットにいるとき、変形菌に興味を持ち始め、一時は、イギリスのリスター家でも過ごし、リスター父子と、長い間文通を続けた。彼の標本、文献、手紙などは、ニューヨーク植物園の標本庫に収められている。
スイスの学校の教師で、ジュラ山地付近を中心に、コケ、地衣、変形菌などを研究した。変形菌は36歳の時に、初めて採集したと言われる。1908年から1937年までに、変形菌を扱った論文を22編出版し、5新属、36新種、49変種のほか、多くの品種を記載した。彼の時代には、好雪性変形菌を、調査した学者は、少なかったので、あまり評価されなかったが、現在は、アメリカのコワルスキーの、研究などによって、再評価されている。
英国生まれ。理科と数学の教師をしていたが、独学で勉強し、ロンドン大学を卒業した。1905年、マッシーに、セイロンの王立植物園の職を薦められて、赴任し、ゴムの木の病理学などを研究した。その後、新設された、茶の研究所に勤め、茶の木の病理学などを研究した。同時に、セイロンの菌類、変形菌類、高等植物などを研究した。引退後は英国に帰国して、英国の菌類の研究を続けた。熱帯の菌類と植物病理学の、先駆者の一人である。彼の標本は、大英博物館に収められている。
米国ニューヨーク生まれで、最初は商業に従事していたが、のち、ニューヨーク植物園に勤めた。若い頃は鉱物や顕微鏡に興味を持ち、1923年から1924年まで、ニューヨーク顕微鏡学会の会長をつとめた。変形菌に関する論文は、1927年から出し始め、1944年には、植物園の標本に基づき、『北米産変形菌』を集大成した。彼の初期の採集は、リスポード(Joseph Henri Rispaud)とたびたび一緒に行った。後者の名は、リスポードスワリホコリなどに残っている。
米国ニューヨーク生まれ。彼は男子高校に入学したが、二年生の時に、集会所の床にマッチを投げたという、疑いをかけられ、告白するように、校長に言われたが、拒否し、退学しなければならなくなった。1907年、彼の弟が、大学の教務係の助手となったので、ラテン語を、家庭教師に習った以外は、独学し、州の奨学資金を得て、大学に入学した。1918年には、陸軍歩兵少尉として、フランスの前線に送られ、砲弾で軽傷を負った。1919年まで、ドイツで占領軍としての勤務をしたのち、中尉で除隊した。1922年から1923年までは、ラトガーズ大学で英語と植物学を教え、1923年、アイオワ大学の植物学助教授、1929年、教授、1933年、米国菌学会副会長となった。1934年には、マクブライドと共著の、『変形菌』を著わした。1944年、米国菌学会会長となった。1949年『北米植物誌』の一分冊として、『変形菌』をまとめた。1953年、アイオワ大学植物学部長。1969年には、アレクソポウロスと共著で、『変形菌』を完成した。彼は採集が好きで、良い天気のときは、研究室での仕事がはかどらないと、嘆いていたという。また研究室は、湿室培養のための材料で一杯だったと言われる。
マクブライドとマーチンの分類体系 (1934) The Myxomycetes.
Class Myxomycetes変形菌綱
Subclass Exosporeae外生胞子亜綱 (Ceratiomyxa)
Subclass Myxogastres内生胞子亜綱
Oredr Physaralesモジホコリ目
Fam. Physaraceae (Cienkowskia, Leocarpus, Physarella, Badhamia, Fuligo, Erionema, Craterium, Physarum, Trichamphora)
Fam. Didymiaceaeカタホコリ科 (Wilczekia, Physarina, Diderma, Mucilago, Didymium, Lepidoderma, Leptoderma)
Order Stemonitalesムラサキホコリ目
Fam. Stemonitaceaeムラサキホコリ科 (Brefeldia, Amaurochaete, Diachea, Schenella, Stemonitis, Comatricha)
Fam. Collodermaceaeメダマホコリ科 (Colloderma)
Fam. Lamprodermaceaeルリホコリ科 (Diacheopsis, Enerthenema, Echinostelium, Clastoderma, Barbeyella, Lamproderma)
Order Licealesコホコリ目
Fam. Cribrariaceaeアミホコリ科 (Lindbladia, Cribraria, Dictydium)
Fam. Liceaceaeコホコリ科 (Hymenobolina, Licea, Kleistobolus, Orcadella)
Fam. Tubiferaceaeクダホコリ科 (Tubifera, Alwisia, Liceopsis)
Fam. Reticulariaceaeドロホコリ科 (Dictydiaethalium, Enteridium, Reticularia)
Fam. Lycogalaceaeマメホコリ科 (Lycogala)
Order Trichialesケホコリ目
Fam. Dianemaceaeイトホコリ科 (Listerella, Margarita, Lamprodermopsis, Dianema)
Fam. Perichaenaceaeヒモホコリ科 (Minakatella, Ophiotheca, Perichaena)
Fam. Arcyriaceaeウツボホコリ科 (Lachnobolus, Arcyria, Heterotrichia, Cornuvia)
Fam. Trichiaceaeケホコリ科 (Prototrichia, Oligonema, Trichia, Hemitrichia, Calonema)
ポーランドの変形菌学者。1960年に、『ポーランド産変形菌』を著わした。
クシェミェニェフスカの分類体系 (1960) Sluzowce Polski.
Myxomycetes
Exosporeae外生胞子亜綱
Ceratiomyxaceaeツノホコリ科 (Ceratiomyxa)
Endosporeae内生胞子亜綱
Physaralesモジホコリ目
Physaraceaeモジホコリ科 (Fuligo, Badhamia, Physarum, Trichamphora, Craterium, Cienkowskia, Leocarpus, Diachea)
Didymiaceaeカタホコリ科 (Spumaria, Didymium)
Didermaceaeホネホコリ科 (Diderma, Wilczekia, Lepidoderma, Leptoderma)
Stemonitalesムラサキホコリ目
Amaurochaetaceaeスミホコリ科 (Amaurochaete, Brefeldia)
Stemonitaceaeムラサキホコリ科 (Stemonitis, Comatricha)
Lamprodermaceaeルリホコリ科 (Ecinostelium, Enerthenema, Lamproderma,Clastoderma, Barbeyella)
Collodermaceaeメダマホコリ科 (Colloderma, Diacheopsis)
Cribrarialesアミホコリ目
Cribrariaceaeアミホコリ科 (Lindbladia, Cribraria, Dictydium)
Enteridialesドロホコリ目
Tubiferaceaeクダホコリ科 (Tubifera)
Reticulariaceaeドロホコリ科 (Reticularia, Liceopsis)
Enteridiaceaeムラサキドロホコリ科 (Enteridium, Dictydiaethalium)
Lycogalaceaeマメホコリ科 (Lycogala)
Licealesコホコリ目
Liceaceaeコホコリ科 (Licea, Orcadella, Kleistobolus, Hymenobolina)
Trichialesケホコリ目
Dianemaceaeイトホコリ科 (Listerella, Lamprodermopsis, Margarita, Dianema)
Perichaenaceaeヒモホコリ科 (Ophiotheca, Perichaena)
Arcyriaceaeウツボホコリ科 (Arcyria, Lachnobolus, Cornuvia)
Trichiaceaeケホコリ科 (Oligonema, Prototrichia, Trichia, Hemitrichia)
米国シカゴ生まれ。6歳の時、第一次バルカン戦争が起こり、父親がギリシャ軍に参加したので、家族も一緒にアテネに帰国した。1919年、12歳の時、シカゴに家族と一緒に帰った。家庭教師に、英語と数学を学び、高校に進んだのち、イリノイ大学に入学して、園芸学を学んだ。1932年、学位を得て、求職の手紙を百通ほど出したが、職は見つからず、やっと1935年に、ケント州立大学に職を得た。1939年には衛生兵に志願した。1943年、ブラジルに派遣され、翌年にはギリシャの農業復興を援助するため、同国に3年間派遣された。1947年にはミシガン州立大学で研究生活に戻った。1952年には、有名な『菌学入門』を出版した。この間に変形菌の研究を始めたが、1956年には、マーチン引退後の、アイオワ大学の教授となった。1959年、米国菌学会会長。1962年にはテキサス大学に移った。1963年、米国植物学会会長。1964年、良性の脳腫瘍が、重症筋無力症と誤診され、二重視と言語不明瞭で困った。1968年、グレイと共著の、『変形菌の生物学』、1969年には、マーチンと共著で、『変形菌』を出版した。1971年から1977年まで、国際菌学連盟会長を勤めた。彼ら夫婦は、モーツァルトの音楽と、猫が好きで、飼っていた猫は、18年間生きたという。筆者が京都で会ったとき、京大農学部の低い石段でも、奥さんの手を引いていたのが、印象に残っている。
マーチンとアレクソポウロスの分類体系 (1969) The Myxomycetes.
Subdivision Myxomycotina変形菌亜門
Class Myxomycetes変形菌綱
Subclass Ceratiomyxomycetidaeツノホコリ亜綱
Order Ceratiomyxalesツノホコリ目
Fam. Ceratiomyxaceaeツノホコリ科 (Ceratiomyxa)
Subclass Myxogastromycetidaeモジホコリ亜綱
Order Licealesコホコリ目
Fam. Liceaceaeコホコリ科 (Licea)
Fam. Reticulariaceaeドロホコリ科 (Tubifera, Dictydiaethalium, Lycogala, Reticularia)
Fam. Cribrariaceaeアミホコリ科 (Lindbladia, Cribraria, Dictydium)
Order Echinostelialesハリホコリ目
Fam. Echinosteliaceaeハリホコリ科 (Echinostelium)
Order Trichialesケホコリ目
Fam. Dianemaceaeイトホコリ科 (Listerella, Calomyxa, Minakatella, Dianema)
Fam. Trichiaceaeケホコリ科 (Perichaena, Oligonema, Calonema, Arcyria, Arcyodes, Cornuvia, Metatrichia, Prototrichia, Hemitrichia,
Trichia)
Order Stemonitalesムラサキホコリ目
Fam. Stemonitaceaeムラサキホコリ科 (Brefeldia, Amaurochaete, Elaeomyxa, Diachea, Schenella, Colloderma, Leptoderma, Diacheopsis, Enerthenema, Stemonitis, Clastoderma, Barbeyella, Macbrideola, Lamproderma, Comatricha)
Order Physaralesモジホコリ目
Fam. Physaraceaeモジホコリ科 (Cienkowskia, Leocarpus, Physarella, Badhamia, Fuligo, Erionema, Craterium, Physarum)
Fam. Didymiaceaeカタホコリ科 (Wilczekia, Physarina, Diderma [Subg. Diderma, Leangium], Mucilago, Didymium [Subg. Lepidodermopsis, Didymium], Lepidoderma)
米国サウスカロライナ州で、農家の長男として生まれた。ノースカロライナ大学で学び、1942年、博士号の学位を得た。1944年には、農務省の菌類研究者として、戦時下の勤務をした。そのころは、敵が穀物に、病原菌を散布するおそれがあったという。その後、ジョージア大学助教授、ルイジアナ州立大学準教授、コロンビア大学準教授となったが、汚れた空気か、菌の胞子のため、いつもくしゃみをしたり、ぜんそく気味であったという。1950年代の末頃からは、細胞性粘菌の研究を始めた。この研究は20年以上続けられ、原生粘菌の発見へとつながった。1975年、成果をまとめた、『粘菌類』が出版された。彼は旅行が好きで、世界一周を2回したと言われ、ハワイ大学の客員教授もした。タヒチ島では、「ムッシュー・シャンピニョン」と呼ばれたという。晩年にはアルツハイマー症を患った。
オリーブの分類体系 (1975) The Mycetozoans.
Subclass. Protostelia原生粘菌亜綱
Fam. Cavosteliidae (Cavostelium, Planoprotostelium, Protosporangium,Ceratiomyxella)
Fam. Ceratiomyxidae (Ceratiomyxaツノホコリ)
Fam. Protosteliidae (Schizoplasmodium, Nematostelium, Protostelium,Schizoplasmodiopsis, Protosteliopsis)
Subclass. Myxogastria 変形菌亜綱
Ord. Echinosteliida ハリホコリ目
Ord. Trichiida ケホコリ目
Ord. Stemonitida ムラサキホコリ目
Ord. Physarida モジホコリ目
Ord. Liceida コホコリ目
ジャワのスラバヤ生まれ。4歳のとき、母親が出産の際に死亡したので、オランダに帰り、幼稚園と小学校に通った。その後、父親が、トランスバール大学の、生物学教授になったので、南アフリカのプレトリアに移った。16歳のときには、父親が人種差別に反対だったので、プレトリアを去らなければならなくなり、イギリスの寄宿高校へ入った。1935年からは、ユトレヒト大学で生物学を学んだ。1951年(35歳)からは、子供の世話をしなければならなかったし、付近の蘚類も調べ終わったので、変形菌類の研究を、趣味で始めた。1958年(42歳)から、変形菌について論文を発表し始めた。そののちも変形菌の研究を続け、インドのディロン、ラカンパル、チョプラの博士論文の審査もした。1974年、『オランダ産変形菌』を出版。1979年と1983年に、その補遺が出た。これらは、1991年、英語版の、『温帯産変形菌案内』として、出版された。筆者が彼女をオランダに訪ねたときには、昼食の用意など、細かい心遣いをして下さった。
レヴィンらの分類体系 Levine et al. (1980) A newly revised classification of the protozoa. J. Protozoology 27: 37-58.
変形菌を原生動物として扱う、分類体系もあるので、その一例として、レヴィンらの体系を挙げておく。
Protista原生生物界
Protozoa原生動物亜界
Sarcomastigophora肉質鞭毛虫門
Sarcodina肉質虫亜門
Rhizopoda根足虫上綱
Acraseaアクラシア綱
Acrasidaアクラシア目
Eumycetozoea粘菌綱
Protosteliia原生粘菌亜綱
Protosteliida原生粘菌目
Dictyosteliia細胞性粘菌亜綱
Dictyosteliida細胞性粘菌目
Myxogastria粘菌亜綱
Echinosteliidaハリホコリ目
Liceidaコホコリ目
Trichiidaケホコリ目
Stemonitidaムラサキホコリ目
Physaridaモジホコリ目
Plasmodiophorea根粒病菌綱
Plasmodiophorida根粒病菌目
Labyrinthomorphaラビリンツラ門
Labyrinthuleaラビリンツラ綱
Labyrinthulidaラビリンツラ目
オーストリアのウィーン生まれで、米国に帰化。ミシガン州立大学で農学士、植物学修士、アイオワ大学で菌学の博士号を取得。ジャマイカの科学博物館の植物学助手、ブラジルのレシフェ大学などでの勤務ののち、1958年より、農務省農業研究機関の、菌類研究員として勤めた。米国菌学会副会長にもなった。中央アメリカの変形菌研究で業績をあげ、1976年には、『新世界熱帯菌誌』の『変形菌』をまとめた。1983年には、マーチンとアレクソポウロスの分類体系を補足した、『変形菌の属』を出版した。
マーチン・アレクソポウロス・ファーの分類体系 (1983) The Genera of Myxomycetes.
Class Myxomycetes 変形菌綱
Subclass Ceratiomyxomycetidae ツノホコリ亜綱
Order Ceratiomyxales ツノホコリ目
Fam. Ceratiomyxaceae ツノホコリ科 (Ceratiomyxa)
Subclass Myxogastromycetidae モジホコリ亜綱
Order Liceales コホコリ目
Fam. Liceaceae コホコリ科 (Licea, Listerella?)
Fam. Enteridiaceae ドロホコリ科 (Tubifera, Dictydiaethalium, Lycogala, Enteridium)
Fam. Cribrariaceae アミホコリ科 (Lindbladia, Cribraria, Dictydium)
Order Echinosteliales ハリホコリ目
Fam. Echinosteliaceae ハリホコリ科 (Echinostelium)
Fam. Clastodermataceae クビナガホコリ科 (Barbeyella, Clastoderma)
Order Trichiales ケホコリ目
Fam. Dianemaceae イトホコリ科 (Calomyxa, Dianema)
Fam. Trichiaceae ケホコリ科 (Minakatella, Prototrichia, Perichaena, Oligonema, Calonema, Arcyria, Arcyodes, Cornuvia, Metatrichia, Hemitrichia, Trichia)
Order Physarales モジホコリ目
Fam. Elaeomyxaceae ロウホコリ科 (Elaeomyxa)
Fam. Physaraceae モジホコリ科 (Protophysarum, Willkommlangea, Leocarpus, Physarella, Badhamia, Fuligo, Erionema, Craterium, Physarum)
Fam. Didymiaceae カタホコリ科 (Trabrooksia?, Diachea, Physarina, Diderma, Mucilago, Didymium, Lepidoderma)
Subclass Stemonitomycetidae ムラサキホコリ亜綱
Order Stemonitales ムラサキホコリ目
Fam. Schenellaceae サクホコリ科 (Schenella)
Fam. Stemonitaceae ムラサキホコリ科 (Brefeldia, Amaurochaete, Colloderma, Leptoderma, Diacheopsis, Enerthenema, Stemonitis, Macbrideola, Lamproderma, Comatricha)