変形菌は対象が小さい上に、発生に季節性があることや、発生基物に嗜好があることなどのために、採集成果をあげるのにかなり時間がかかる。また、対象が小さいので、あまり人の眼を引くものではなく、研究は地味なものとなる。それゆえか研究者は数少ない。しかも、その少ない研究者の中で、伝記などが残されている例はごく希で、ほとんどの場合は研究者の経歴などが不明である。しかし、研究に行き詰まったときや、研究が嫌になったときなどには、他の研究者の伝記などを読んでみると、思わぬヒントがあったり、勇気付けられたりすることも多いので、私はできるだけ、先人の業績や経歴を明らかにしたいと思って資料を集めてきた。しかし、いつまでたっても完了しないかもしれないので、現在までに判明した研究者の略伝をまとめてみることにした。心残りになっているのは、今掛寿造、印東弘玄、大庭秀景、大淵亮三、加藤君雄、金崎宇吉、楠本秀男、小畔正秋、島袋俊一、下中野栄蔵、椿啓介、中道等、長尾(三谷)チエ、西尾侃一、西面欽一郎、浜島繁隆、細山田良康、堀金義、吉野谷久一など各氏の経歴が不明で、この文中に入れられなかったことである。しかし、この中にはまだ元気な方もおられるので、その方については、いつか業績の紹介もできるのではないかと思っている。今後も、このような分野に興味を持つ方々が調査を継続して、先人の経歴などを明らかにされることを希望している。資料の収集については変形菌研究会の会員などに大変お世話になった。その中でも内田正宏、玉山光典、萩原博光、原紺勇一、張尾雅信、福田廣一、藤岡佳代子、西川恒彦、松本淳、柳田欣作、山岡和興、山本清龍らの各氏には特にお世話頂いた。ここに厚くお礼申し上げる。文中の人物は五十音順に配列されている。旧仮名遣いは原則として新仮名遣いに改め、読みづらい場合は句読点を追加している引用文もある。また、一部の不要な漢字をひらがなとした引用文もある。